*Pure love*
序章

「さようなら!」

 帰りのホームルームが終わり,みんながさっさと帰り始める.私も帰り支度を済ませて,教室を出て,隣のクラスに声を掛ける.

「花香―!帰ろうよー」

「待ってー今行くー」

 出てきたと思ったら,ちょっとトイレ寄るー,と悲鳴を上げてそのままトイレに駆け込んだ.
 まったく.私も続いて入ると,花香は髪を慌てて整えていた.

「あぁー!髪の毛ぐちゃぐちゃ!まったく,男子は小学生か!」

 愚痴りながら,杏樹やってー,とお願いしてくる.

 さらに脱力.呆れながらきれいな栗色の髪の毛を手で梳く.お団子でいいよね.ゆるくお団子に結ぶ.

「手先が器用な杏樹がやると,平凡なヘアスタイルがオシャレに見えるから不思議だよね」

 それってほめ言葉?ほめ言葉だよ?なんてやり取りをして,

「よしこれでバッチシ!ありがとう.じゃあ行こうか」

 そうだね,と頷きかけて頭を止める.行くって?

「帰るんじゃないの?」

「ちょっとグラウンドまで」

 なんなのよ,とため息をついて花香の後を追った.

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