*Pure love*
序章
「さようなら!」
帰りのホームルームが終わり,みんながさっさと帰り始める.私も帰り支度を済ませて,教室を出て,隣のクラスに声を掛ける.
「花香―!帰ろうよー」
「待ってー今行くー」
出てきたと思ったら,ちょっとトイレ寄るー,と悲鳴を上げてそのままトイレに駆け込んだ.
まったく.私も続いて入ると,花香は髪を慌てて整えていた.
「あぁー!髪の毛ぐちゃぐちゃ!まったく,男子は小学生か!」
愚痴りながら,杏樹やってー,とお願いしてくる.
さらに脱力.呆れながらきれいな栗色の髪の毛を手で梳く.お団子でいいよね.ゆるくお団子に結ぶ.
「手先が器用な杏樹がやると,平凡なヘアスタイルがオシャレに見えるから不思議だよね」
それってほめ言葉?ほめ言葉だよ?なんてやり取りをして,
「よしこれでバッチシ!ありがとう.じゃあ行こうか」
そうだね,と頷きかけて頭を止める.行くって?
「帰るんじゃないの?」
「ちょっとグラウンドまで」
なんなのよ,とため息をついて花香の後を追った.
< 1 / 50 >