*Pure love*
四章 梅雨 意識
雨が毎日のように降り続くジメジメした季節、梅雨がやって来た。当たり前のように傘が毎日の必須アイテムになっている。
「雨はやだなー」
「ローファーびしょびしょだしね」
今日もまた花香と話ながら学校へ向かっていた。
じめじめした通学路と下駄箱を通りすぎ、教室に入る。
「おはよう、佐藤さん、望月さん」
窓の近くで織本君がこっちを向いて手を振った。
軽く会釈して席に座る。
先月、私の中にあった気持ちに気づかされてから、織本君への態度がちょっと不自然になってしまっている。
織本君は全く気づいていない様子だけれど。
授業中、織本君の方に目が向いてしまう。
改めて見ると、授業を盛り上げる様な発言をするのに、他の男子みたいにやり過ぎて先生に怒られる、といったこともなく、うまい具合に留めておいている。初対面の時も話しやすかったことを思い出して、意外と口上手だということが判明した。
でも、休み時間に男子とふざけているところは普通の中二男子で可愛い。
その様子を眺めながら、思わずくすりと笑いがもれる。隣で花香が不思議そうに首を傾げた。
***
「ねぇ、杏樹」
「なに?」
「ズバリ、織本君のこと好きでしょ」
いきなりの指摘に思わず狼狽えてしまい、やっぱりね、とウンウンと頷かれた。
「最近、挙動がおかしいことには気づいていたんだけど…っていうか杏樹バレバレ!第三者の私でもわかるんだから」
うぅと呻く。
「しょうがないでしょ?だって気になるんだから」
「相手が織本君だからねー。あそこまで鈍いのもちょっと問題かなー。さっさと気づけ!って感じよね。まあ頑張れ、とりあえず応援するから!」
励ましているのか、からかっているのか微妙な言葉に、曖昧な表情になる。
細かく激しい雨が窓を叩いていた。