*Pure love*
五章 京太side 一目惚れ
佐藤のことを知ったのは一年のとき。
部活中に話したのがきっかけだった。
***
その日は、外周を走るメニューが入っていて、確か一番で走り終わっていたんだと思う。
何にせよ、少し暇になったから体育館前でボールを蹴っていた。
リフティングをしたり、体育館の壁を使ってパス練習したり。夢中になってひたすらボールだけ見続けていた。
しばらくやってちょっと疲れてきてボールを止める。すると小さな拍手が聞こえた。音のする方へ振り向く。
すぐ近くに髪をツインテールにして、体操着を着ている女子が座っていた。
「すごい!」
キュッと目を細めて笑う。顔は整っている方で、何より笑顔が可愛かった。
「上手だね、サッカー部?一年生だよね」
どぎまぎしながら頷く。
そっかぁ、私も。また笑った。
「今五時十三分だから、まだ外周終わらないな」
早く帰ってこないかな。呟いた言葉に耳を疑った。
「えっ!今何分って?」
大声を出してしまい、その子の肩がビクッと跳ねた。
「えっ…ご、五時十三分だけど…」
「やっべ、まずっ!」
外周終了時間から二十分近くたっていた。
慌てて、ありがとう、と手を振ってグラウンドへ走る。後ろで戸惑いながらも手を振り返してくれたのが見えた。
その後、監督からしっかり怒られ、罰として部室の掃除を命じられた。
俺より遅かった奴らが、片手で拝みながら帰っていく。先輩は、肩を叩いて頑張れよと笑いながら帰っていった。
誰もいなくなった部室を手早く掃除する。
ずっと頭の中であの子の笑顔が浮かんでいた。
***
学年が一緒な事だけしか知らないその子を探すことはまずできない。一学年で三百人前後もいるから到底探せない。
名前聞いとけばよかったなと思ったものの、あの場面で聞くとかおかしすぎだろと突っ込む。
何にせよ、もう無理だ。自分の中でそう割りきっていたのだが。