*Pure love*
それからしばらくして、
「あーじゃあこっちも。俺が、織本晃太。そんで…まぁ、知らないやついないか。こっちが桜田京太。俺たちも親友なんだ!」
引っ張りだされて紹介された相手は、あのとき見た女の子だった。
とりあえず、後で調子に乗るので、晃太が言った親友というフレーズに噛みついておいたが、内心は結構焦っていた。
「よろしくね」
佐藤がこちらを向いてニコッと笑う。あの時と同じ笑顔だなと思いながら、あぁ、と返事をした。
始業式の日に知り合ったらしく、晃太と佐藤は仲がいい。望月も含めた三人でよく話す傍らで俺も話にはいる、といった体で佐藤と毎日顔を会わす。
二年になって少しずつ佐藤の接していくうちに惹かれていった。あっちの中では晃太と仲がいい男の子という認識で十分だった。だけれど
「最近佐藤さん熱っぽいらしいよ。今、風邪流行っているからかな」
6月の中頃、晃太がなんてことなしに言った。ふぅん、と頷いておいて頭を沈める。
ゴールデンウィークが過ぎた後から、佐藤の挙動が少し変になった。晃太が近づくと顔を赤らめたり、ずっとぼっとしたりする事が目に見えてわかるくらい増えた。難なくわかった。
佐藤は晃太のことが好きになったんだ…と。
それに気づいて、正直結構へこんだ。自分自身もよくわかっていなかったドキドキが、佐藤のことが好きだということをはからずも証明されてしまったことに、なんとも言えない気持ちでいた。
「どうしたんだよ、京太。寝不足?疲れてんの?」
頭を沈めている俺を疑問に思ったらしい。晃太が声をかけてきた。
何でもないとヒラヒラ手を振る。
ふと思い付いて、晃太に尋ねた。
「お前さ、佐藤のことどう思ってるんだよ。実際」
あくまで、あくまでも何気なく話す。
「佐藤さん?」
晃太がきょとんとする。
「話しやすいし、いい子だよね」
それがどうかしたの、と逆に聞かれたので、曖昧に誤魔化し、ふぅんと納得したようにみせる。
とりあえず、晃太は佐藤に対して恋愛感情は持ってないらしい。その事に少しだけほっとする。
あと、晃太は些細なことにとてもよく気がつくが、自分のことになると、もうとにかく鈍い。その事にもほっとした。自分がずるいやつなのは重々承知している.
今、佐藤のこと気になっているとか言われたら立ち直れなかったかもしれない。
とりあえず今はそれでいい。ひっそりと心の中で安心した。