*Pure love*
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「ほら,あそこに見えるの!郁馬だよ!」
幼馴染で,サッカー部所属の谷野郁馬を見つけるなり,手を振った.郁馬の方もこちらに気づいて手を振り返してくる.
「あ,桜田君もいる!」
花香がグラウンドを指差して,歓声を上げた.うちの学校のサッカー部の花形,桜田京太君を指差しながら,目を爛々と輝かせている.
「やっぱカッコいい…!うちのクラスの奴とは大違いだ」
いつもとは違ったミーハーな親友にクスッと笑いながら,自分も練習を見る.
練習試合をやっているらしい.その中でも上手いと見ていてわかるのが桜田君だ.顔は割と整った方で,そこに惹かれてファンが集まるのだろう.
「まぁ,確かに顔はきれいだよね.でも性格はどうかな」
何気なく口にすると,花香はくるっとこちらを見て顔をしかめた.
「それがね,あんまよくないらしいんだよなこれが.結構無口とか,一匹狼として有名なんだよね.いわゆるクールビューティーってやつ?ま,そこがいいってファンがいるみたいよ?私はどうかと思うけど」
さっきと表情を一変させて,さらりと言い放った.あまりの変貌ぶりに慄きながらも突っ込む.
「で,でも花香さっきカッコいいって!」
「ただの目の保養よ.いっつも髪をぐちゃぐちゃにして来る男子みたいなの見ているんだから.恋愛感情とは別」
さらりと言い放つ親友に,相変わらずの毒舌っぷりだなと思いながら,そっかーと呟いた.
「顔は良くても,性格なんてそんなもんだよね」
「目の保養に留めておけば十分よ」
二人でしばらくぼーっと試合を眺めていると,桜田君の相手のチームの男の子が目に入った.背が高くて軽く日に焼けているその子は,桜田君と互角に戦っていた.
「誰かな?あの桜田君と互角に戦っているの?」
花香に聞くと,眉をひそめて,さぁねと答えた.
「サッカー部って京太君くらいしか顔がいいのいないじゃない?だからあんまり知らない」
うちの学校の人気の男子は,ほとんどがバスケ部や野球部に所属している.サッカー部は少数派なのだ.女子があまり来ないともあって,噂は立たないらしい.
「誰だかわかんないけど,すごいなぁ」