*Pure love*
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郁馬から連絡してもらって、織本君と桜田君が当日一緒に来ることになった。
お祭りの日。押し入れから朝顔柄の浴衣を出す。小学校の時に親戚の人からもらった物で、よく花香に自慢していたのを覚えている。
「これだったら、髪は上げた方がいいよね」
簪なんてものはないので、持っているシュシュの中から藍色の落ち着いた感じの物を出してあわせてみる。
「これかな。……やっぱりちょっと気分あがっているかも」
浴衣をハンガーに掛けて、微笑む。夕方のお祭りがとても待ち遠しかった。
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「楽しみだね~」
浴衣に着替えて、花香と笑い会う。夕方になってくると、少し暑さは和らいでいた。弱く吹く涼しい風が心地いい。
「あっ、あそこだ」
花香が手を振ると、三人組の一人が振り返した。
「お待たせー…って何その服装。浴衣来てくるでしょ普通」
郁馬たちは浴衣ではなくて、Tシャツにズボンといった服装だった。
「え、だってお祭り楽しむくらいならこれでいいじゃん」
「せっかくのお祭りだよ!?風情くらい大事にしようよねぇ」
いつも通り始まった二人の間に入って止める。
「じゃあ、まずは屋台に行こうよ。花火はラストだし」
屋台あるんだ、と織本くん達が顔を輝かせる。
「うちのまわり、祭りやってなくて、屋台なんて久しぶり」
横で桜田君がこくこくと頷いた。
公園内の道という道をたくさんの屋台が取り囲んで、普段は暗い公園が、テーマパーク並に明るい。
織本くん達はお面だの、リンゴ飴だの、金魚すくいだの、見る度に顔を輝かせる。楽しんでもらえてそう、とほっとする。
「ヨーヨーすくいやろう!」
その中の一つ、ヨーヨーすくいに織本くんが目を止めた。
「うわ!久しぶりにやるとやっぱ取れない!」
おじさんもう一回!小銭を渡してまたヨーヨーに顔を向けた。
小さな子供みたいに張り切る織本君に思わず頬が緩む。かわいい。
やっとの思いで二個取れた。綺麗なすみれ色のと、水色のヨーヨー。思わずみとれた。シンプルなデザインがより可愛い。
「綺麗…私もやろうかな」
財布を取り出そうとしたとたん
「んじゃ次行こう!」
郁馬が嬉々として歩き出した。本当に私ってタイミング悪すぎ。
途中何度か振り返ったけれど、仕方なくヨーヨーは諦めて、みんなについて行く。
とぼとぼとついて行く足取りは少し重くて、私今何歳だよ、と苦笑する。
「はい」
いきなり目の前がすみれ色になった。
「やりたかったんでしょ?あげるよ」
あぁもう一つあるから気にしないで。ヒラヒラと手を振る。
「それにさ、その浴衣に似合ってるよね。この色」
織本くんが服装を見ていてくれたことにドキッとする。
「…ありがとう」
少しモゴモゴとした言い方になってしまったけれど、気にも止めず、よかったね、と笑った。