*Pure love*

 ***

 授業が終わり、部活に行こうと教室を出ようとしたとき、

「佐藤さん」

「杏樹ちゃん!」

 今日できるだけ避けていた二人から直球で捕まえられた。

 何気ない体を装って振り向く。

「うん?どうかしたの?」

 二人は顔を見合わせて、ちょっと、と言葉を濁らす。なんとなく察しはついた。ついてほしくなかった。


 二人にまた階段の下に連れられて、妙ちゃんが話始める。

「あの…えっと何て言ったらいいのかな」

「その…俺達付き合い始めたんだ」

 そこで冷静にしていられたのは我ながら凄いと思う。でもものすごいショックは受けていた。

 ツ・キ・ア・イ・ハ・ジ・メ・タ?

「この間、渡してもらったものでOKをもらって」
 あぁ、もういいよ。理由なんて言わないで。付き合い始めた…なんて、織本君から聞きたくなかった。

「なんで…私に…?」

 間の抜けた質問しか出来ない程、本当に、

「だって、杏樹ちゃんに渡してもらったでしょ。その後を話したほうがいいと思って」

 そっか…、笑った。

「お幸せにね…って違うか?」

 相手も笑った。

「用件はこれだけかな?今日ちょっと早く部活に行かなきゃいけないんだ」

 腕時計をちらっと見る。
 二人とも少し慌てて、

「ごめん!引き留めて」

 二人の間をすり抜け、またね、と走る。
 本当は早くいかなくてもいい.ただ,ただ…
 幸せそうな二人も見ていたくなかった.

 ***
 
 階段を上がって最上階へ行った。ここは私の学校で、最も人が来ない場所。

 ちょっと階段から離れて座り込み、俯くと嗚咽は堪えられなかった。
 全部、全部私のせい。想いを伝えなかった、それでもって妙ちゃんの告白を手伝った、私の。

 もう結構前からわかっていた。織本君は私のことただの話しやすい女子程度にしか思ってなくて。でも振り向いてほしくて、名前で呼ばれたくて。

 朝、降りそうだと思った空から無数の水の粒が窓ガラスを強く打ち付ける。静かに、その音と私の嗚咽だけが辺りを包んだ。

 よくわからないけど,自分の中からこみあげてくるものがあって,ただ泣き続ける。
 好きだったよ,織本君.…終わりにしなきゃな.
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