*Pure love*

***

その後、なんとか部活に行き、部活をやりとげ家路についた。

帰り道、花香に家に来られるか聞く。花香も察するところがあったようで、わかったと頷いてくれた。

   ***

家に帰って、夕飯、お風呂を済ませた後に、花香がやって来た。すぐに部屋に通す。

「なんとなく用件はわかるけど…どうぞ」

カーペットの上に座った花香が促す。

持ってきたティーセットを低い丸テーブルにのせて、私も腰かけた。そして近くにあったクッションを引き寄せる。ぎゅっと握りしめる.

「織本君が妙ちゃんと付き合い始めた。なので、失恋しちゃった」

花香にとって、これは予想の範疇だったらしい。
聞いたよ、とさらっと言ってくれる。

「…それで」

続けようとしたら、花香が不思議そうな顔をしたので、いい?と聞く。あぁどうぞ、花香が頷く。

「桜田君に…えっと…告られました」

これは意表をつけたようで、目を大きく見開く。

「あっ、そう。ふーん、やっと度胸出したんだ。告るなんて」

花香の口振りに違和感を覚えた。

「えっ、花香知ってたの?」

「そりゃあ、もちろん。杏樹並みにわかりやすくはなかったけど、まぁ観察してればわかるわよ」

この人の観察力と情報収集力には舌を巻く。

「…それでさ、どうすればいいと思う?」

「うーんとね」

花香は悩む素振りを見せた。

「告られた内容としては?」

あれを説明するのか。顔が真っ赤になるのを感じながら口を開く。

「…全部説明するのは恥ずかしいんだけど…その、別に付き合ってくれって訳じゃないからって」

うわー、花香が顔をしかめた。

「それは厄介だ。好きって言われて、付き合わなくていいとも言われたこっちの身を考えろってのよ」

まぁそうだね、と吹き出す。

「…杏樹はこれまで、桜田君を恋愛対象として、見たことはないんだよね」

「まあね。織本君を好きになったのが早かったし」

「それじゃあ、さ。とりあえず、織本君のことは置いといて、桜田君のことを、今、もう一度考えてみたら?っていうのが妥当じゃないかな?」

告白されたのは別で、と付け足す。

「そうだね…やっぱり。……ねぇ、明日どうしよう?どんな顔してどんな態度で会えばいいのかな?」

「多分、向こうもヘタレだからそんなに積極的に接してこないと思う。普通に構えて置けば?
まぁ、思いを伝えたから、グイグイくるかもしれないけど」

「ええっ」

どうしよう!とオーバーにリアクションをして、花香と笑いあう。
花香という、しみじみありがたく思いながら、花香に感謝した。

< 33 / 50 >

この作品をシェア

pagetop