*Pure love*
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その後、なんとか部活に行き、部活をやりとげ家路についた。
帰り道、花香に家に来られるか聞く。花香も察するところがあったようで、わかったと頷いてくれた。
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家に帰って、夕飯、お風呂を済ませた後に、花香がやって来た。すぐに部屋に通す。
「なんとなく用件はわかるけど…どうぞ」
カーペットの上に座った花香が促す。
持ってきたティーセットを低い丸テーブルにのせて、私も腰かけた。そして近くにあったクッションを引き寄せる。ぎゅっと握りしめる.
「織本君が妙ちゃんと付き合い始めた。なので、失恋しちゃった」
花香にとって、これは予想の範疇だったらしい。
聞いたよ、とさらっと言ってくれる。
「…それで」
続けようとしたら、花香が不思議そうな顔をしたので、いい?と聞く。あぁどうぞ、花香が頷く。
「桜田君に…えっと…告られました」
これは意表をつけたようで、目を大きく見開く。
「あっ、そう。ふーん、やっと度胸出したんだ。告るなんて」
花香の口振りに違和感を覚えた。
「えっ、花香知ってたの?」
「そりゃあ、もちろん。杏樹並みにわかりやすくはなかったけど、まぁ観察してればわかるわよ」
この人の観察力と情報収集力には舌を巻く。
「…それでさ、どうすればいいと思う?」
「うーんとね」
花香は悩む素振りを見せた。
「告られた内容としては?」
あれを説明するのか。顔が真っ赤になるのを感じながら口を開く。
「…全部説明するのは恥ずかしいんだけど…その、別に付き合ってくれって訳じゃないからって」
うわー、花香が顔をしかめた。
「それは厄介だ。好きって言われて、付き合わなくていいとも言われたこっちの身を考えろってのよ」
まぁそうだね、と吹き出す。
「…杏樹はこれまで、桜田君を恋愛対象として、見たことはないんだよね」
「まあね。織本君を好きになったのが早かったし」
「それじゃあ、さ。とりあえず、織本君のことは置いといて、桜田君のことを、今、もう一度考えてみたら?っていうのが妥当じゃないかな?」
告白されたのは別で、と付け足す。
「そうだね…やっぱり。……ねぇ、明日どうしよう?どんな顔してどんな態度で会えばいいのかな?」
「多分、向こうもヘタレだからそんなに積極的に接してこないと思う。普通に構えて置けば?
まぁ、思いを伝えたから、グイグイくるかもしれないけど」
「ええっ」
どうしよう!とオーバーにリアクションをして、花香と笑いあう。
花香という、しみじみありがたく思いながら、花香に感謝した。