*Pure love*
一章 出会い
新学期.
今日から二年生になるんだと思っていても,あんまり実感はわかない.
家を出て,花香の家へ向かう.
「花香ー行こう」
「うん」
駅までの道を二人で歩く.
「あっ,花香と杏樹」
「あっ,郁馬じゃん」
途中で,近所に住んでいる幼馴染の谷野郁馬にあった.
「僕急ぐから.じゃあね」
言い残して走り去ってしまった.
行く場所は同じなのだが,いってらっしゃいと見送る.
郁馬がいなくなると,またおしゃべりが再開した.
***
駅について電車に乗る.
満員電車の中,花香とのおしゃべりの話題は『楽しみなこと』になった.
「やっぱり,クラス替えだよねー!」
隣で花香がうきうきする.
「去年はバラバラだったけど,今年は一緒がいいなー.ねっ杏樹」
「もちろん.でも電車で騒がしすぎ.ちょっと抑えて」
はぁい.返事をしながらもこぼれんばかりの笑顔.こういうところがモテるんだよな,花香.女子の私から見ても可愛いし,.
中学校に入ってから,もう五人に告られたと聞いている.そして全部断ったらしい.
本人曰く,好きでもない人と付き合うのはごめんだし,他に好きな人いるのに相手に悪い,んだそうだ.(花香は郁馬のことが小学校のころから好きだ)
そんなさっぱりとした性格が好きなんだけれど….それでも羨ましいと思うのは変なのかな.それに
「私が誰かと付き合うなんて想像もできないし」
「何々,杏樹そんなことしたいと思っているわけ?」
「!」
気づいたら思っていたことが口に出ていたらしい.花香が覗き込むように,ニヤニヤ笑いで窺っていた.
「まぁ,さすがに杏樹も付き合いたいと思う頃か」
完全に見透かされた様子に弁明できるはずもなく,黙って俯く.
大丈夫だよぉ,と花香は笑った.