*Pure love*

***

「「いってきまーす」」

用意を完璧に済ませて、郁馬と家を出た。

「そういえば杏樹は?」

今さらながら、杏樹のことが気になった。

佐藤 杏樹。私の大切な幼馴染みの一人。

「今日用事あるとか言ってたよ」

あ。きっと杏樹、気を使ったな。
直接話したわけじゃないのに、思い至った。

そういう子だ。優しいんだ杏樹は。

「そっか。じゃあ今日は二人だね」

せっかく、杏樹の厚意なんだし、楽しませてもらおう。

「んー、じゃあこうする?」

いきなり、手に暖かい感触がした。

横を歩いていた郁馬が自分の左手で、私の右手を握っている。…って、おい。

「ちょっと郁馬!?」

ブンブンと上下左右に手を振っても、離れる気配はゼロ。

「いーじゃん?たまには」

隙を見て、郁馬が指を絡めてくる。
こ、これは…聞いたことはあったけど…

無性に照れくさい!!

「え、駅までね!」

顔を反らしながら言ったけど、

「クスクス。はいはい」

郁馬は気づいているようで、

「わかったならいい!!」

赤くなった私の顔に。


初めてだったんだもの。仕方ない。うん、仕方ない!

***

学校について、郁馬と別れて教室に向かう。

中を見ると、杏樹は織本と桜田と話していた。

「あ、おはよー、花香!」

「おはよ。杏樹」

どことなく幸せそうにしている杏樹。織本と話せて、そんなに嬉しいのか。

「おはよう、望月さん」

「…はよ」

いつもと変わらずニコニコしている織本と、無愛想に挨拶する桜田。

桜田が杏樹のことが好きなのは見てればわかった。
なのにアタックしないのは、こいつも杏樹の気持ちを知ってるからか…。

「おはよう、織本君に桜田君」

< 49 / 50 >

この作品をシェア

pagetop