*Pure love*
***
「「いってきまーす」」
用意を完璧に済ませて、郁馬と家を出た。
「そういえば杏樹は?」
今さらながら、杏樹のことが気になった。
佐藤 杏樹。私の大切な幼馴染みの一人。
「今日用事あるとか言ってたよ」
あ。きっと杏樹、気を使ったな。
直接話したわけじゃないのに、思い至った。
そういう子だ。優しいんだ杏樹は。
「そっか。じゃあ今日は二人だね」
せっかく、杏樹の厚意なんだし、楽しませてもらおう。
「んー、じゃあこうする?」
いきなり、手に暖かい感触がした。
横を歩いていた郁馬が自分の左手で、私の右手を握っている。…って、おい。
「ちょっと郁馬!?」
ブンブンと上下左右に手を振っても、離れる気配はゼロ。
「いーじゃん?たまには」
隙を見て、郁馬が指を絡めてくる。
こ、これは…聞いたことはあったけど…
無性に照れくさい!!
「え、駅までね!」
顔を反らしながら言ったけど、
「クスクス。はいはい」
郁馬は気づいているようで、
「わかったならいい!!」
赤くなった私の顔に。
初めてだったんだもの。仕方ない。うん、仕方ない!
***
学校について、郁馬と別れて教室に向かう。
中を見ると、杏樹は織本と桜田と話していた。
「あ、おはよー、花香!」
「おはよ。杏樹」
どことなく幸せそうにしている杏樹。織本と話せて、そんなに嬉しいのか。
「おはよう、望月さん」
「…はよ」
いつもと変わらずニコニコしている織本と、無愛想に挨拶する桜田。
桜田が杏樹のことが好きなのは見てればわかった。
なのにアタックしないのは、こいつも杏樹の気持ちを知ってるからか…。
「おはよう、織本君に桜田君」