*Pure love*

「杏樹―!ごめーん.人が多くてそっち行けなかったー!」

 学校に着くと,校門で花香が待っていた.半べそになりながら謝ってくるので,いいよ,と宥めながら,さっきとはすごい変貌ぶりだなと苦笑する.

一緒にいたはずの織本君はどこかに行ってしまっていた.

「それよりさ,早くクラス替え表見に行こう」

 まだ半べその花香に提案して下駄箱まで急ぐ. 
 遅れたおかげかクラス替え表前にはあまり人がいなかった.

 私はどこかな,とキョロキョロ探していると,杏樹―!あったよー!花香の声がしたのでそこへ急ぐ.

「ほら,私たち同じ四組!郁馬とは違ったけど,桜田君とは一緒だよ!」

 花香が嬉々として四組の表を指差す.だから変わり過ぎだって.苦笑しながら私も見る.
 表には私たちの名前と桜田京太という文字,そして

「織本晃太・・・」

「えっ,誰々そいつ」

 花香に帰りに説明すると言って笑った.

 ***

 始業式が終わってすぐ解散になった.クラスは明日から始まる.
 帰り道,花香に朝にあったことの詳細を話す.

「・・・だから知り合ったんだよ」

 ふぅんと納得したように花香は頷いた.

「それで?織本君はどんな感じなの?」

「優しかったよ.困っている人見たら助けちゃうって言ってた」

 なるほどねぇ,また感心したように頷いて

「明日どんな奴か、見ようっと」

と忍び笑った.

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