*Pure love*
***
翌日.
「皆さんおはようございます!四組担任の花里です」
担任の先生は,明るくてハキハキした,活発そうな女の人だった.
「今日は,自己紹介をやってもらおうと考えています.後,クラスの目標ね」
まず自己紹介から,と言って,出席番号順に始まった.
みんなこうなることを予想していたのか,ブーイングは上がったものの,すらすらと自己紹介は進む.織本君も自己紹介をして,桜田君の時は女子から黄色い声が上がった.
女子の方も難なく進み,無難な目標も立てられ,その日の授業は終わった.
その後男女六人ほどで班を作り,先生が指名した班が掃除になる.
掃除のグループが決まり、同じ班になった、女の子が声をかけてきた。
「はじめまして!私、小坂井このはっていうの!ヨロシクね~」
始めから明るいテンションだった。
「他の女子になんか恨めしい目付きされちゃったよ!なんかアンラッキー」
ケラケラと、笑いながら話すので自然と笑みがこぼれる。こういうタイプの子は接しやすい。
「そうなんだ~。あっ、私は佐藤杏樹。で、こっちが望月花香。幼なじみなんだ!」
「よろしくね!」
へぇ、軽く目を見はる。
「幼なじみなんだ~。道理で仲がすごくいいんだね。それにしても、ちょっと望月さんイメージと違ったー!
もっと…何て言うのかな?クールビューティー?一人でいるのが好きです!みたいな」
よくありがちな花香に対してのイメージである。
「全っ然違うよ~、ゴシップとか噂話大好きだよ!」
「よく言えば情報通、言わなければ野次馬…かなぁ」
「何それ~」
花香の性格も功をなして、一気に三人は打ち解けた。
同じ班になった私と花香,織本君と桜田君,あと小坂井さんともう一人の男子はそのまま解散になった.
(これを決めるために男子と女子それぞれが一悶着あって,できた私の班が周りの子から恨みがましい目つきで見られたのはいうまでもない……)
***
「佐藤さん!」
花香と校門を出たところで声を掛けられ,振り向くと織本君と桜田君だった.ほかの二人は家が近いから帰ってしまっている.
「同じクラスなんだね!すごくびっくりした.一年間と言わずこれからよろしくね」
「そんな.私こそこれからよろしく」
「杏樹―,私も紹介して」
歩きながら二人で話していると,後ろから花香が顔を出してきた.
「ごめん,ごめん.えっと…こっちは私の親友の望月花香」
「よろしくね」
紹介すると
「俺は織本晃太.そんで…まぁ知らない奴いないか.こっちが桜田京太.俺たちも親友なんだ」
と,紹介する.
「ちょっと待て!」
なぜか桜田君が突っ込んだ.
「俺はまだお前を親友として認めていない!」
「えー!親友じゃないの?」
「友達だ!」
「親友でもよくない?」
「よくない!」
なぜか意地になっている桜田君とたしなめているような織本君のやり取りが面白くて思わず吹き出す.花香は俯いてこちらを見ていなかったが,小刻みに肩が震えている.
私が吹き出したので,二人がこちらを向くと同時に花香も視界に入ったらしい.織本君も吹き出し,桜田君はくすりと笑った.
「ってか,改めてなんだけど,私は佐藤杏樹.それでこっちが親友の花香.これからよろしくね」
やっと桜田君に自己紹介できた.隣にいる花香は笑いのショックからまだ立ち直れていない.
「…あぁ.よろしく」
桜田君はちょっと照れたような顔をした.
「んじゃ,もう一度改めまして,これからよろしくお願いしまーす」
織本君がその場をまとめて,みんなが笑いに包まれた.
今年はなんだか楽しくなりそう.中学二年生活スタートです.
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