*正しい思春期の切愛理由*


「1階に寄り道してんじゃねーの?」

「1階に? なんで?」
 


売店にでも寄ってんのか? と言いかけた俺に、東谷は凛々しい眉を上げた。
 
いたずらを企むような楽しげな表情だ。



「運命の君。に、会いに行ったんだろ」
 


去年レセプトをしていた杉本先生の運命の君は、今年から1階の外来受付にいるらしい。
 

別に興味もなかったし、どうでもよかった。
 

今はとにかく杉本先生のサインが必要なこの書類をどうにかしなくちゃいけない。



「あの先生、電話嫌いだからな」
 


白衣のポケットから携帯を取り出しつつ面倒だな、と思っていると、


「ここからなら追いかけた方が早いんじゃね?」
 

東谷の言葉で、


「それもそうだな」
 

俺は研修医室を後にした。



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