*正しい思春期の切愛理由*
―――
「おかえり」
帰宅直後、玄関を開けた瞬間に声をかけられて、俺は文字通り跳びあがった。
「い、いち…」
トイレのドアに手をかけながら、一歌がきょとんとした顔で俺を見ている。
「ん? どうかした?」
まっすぐ見つめられて自分の顔が熱くなっていくのを感じる。
「……べ、別に、なんでもねーよ!」
吐き捨てながら靴をぬぎ、狭い廊下をずかずかと通り抜ける。
一歌の方は一切見なかったけど、首をひねって不思議そうに俺を見てるのがわかった。