*正しい思春期の切愛理由*
せっかくいいところなのに。
「……なに?」
水を差されて不貞腐れていると、一歌は顔を赤らめたまま俺を見上げた。
「ちゃんと考えよう、2人で」
ひどく不安げな表情で、俺の頬に手を伸ばす。
その小さな顔をまっすぐ見下ろした。
「俺は一歌が好きだよ」
「あたしも、好きだよ瑞貴」
ためらいなく返ってきた言葉が逆にひっかかる。
お互い想い合っているのなら――
「何を考える必要がある?」
そう言うと、一歌は悲しげに眉を下げた。