真夜中の足音(中編)

「ァゥッ」

声にならない声を出し、陽子は音を立てないように身体を起こすと走り始めた。

身体が痺れて何度も手を付く。

あの人は、自分を追っている。

目的は、はっきりしないが、良いことのわけが無い。

陽子は、パンプスが脱げないように、気をつけながらも、タイトスカートが多少捲り上げるのは気にせず走り続ける。

聞こえはしないが、後ろから足音が追ってくるようで、走るのを止めるに止めれなかった。

息も耐え耐え、もう少しで、家というところまでたどり着いたが、そこで安心したのか、足をひねるとそのままスライディングするような格好で、滑るようにこけてしまった。

両手で身体を起こす。
疲労もさることながら、身体の所々に痛みを感じる。
特にこけた時にぶつけた右肘は、内出血になっているだろう。

「イタッ!」

こけた時に捻った右足に鋭い痛みを感じた。

「もうすぐ、家なのに!」憤るが、体重をかけることができない。

痛みに耐え、右手で壁を支え立ち上がる。

その時、背後からの光が陽子を包み込んだ。
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