真夜中の足音(中編)
「ほんとに立派なマンションですね」

丸山とは、マンションに着くまでに、雑談を交わしていた。

夜道の女性の一人歩きがいかに危険か。痴漢の被害がどれだけ多いか。さらには、陽子が一人暮らしであることや、最近仕事が忙しいことなどまで。

「私だけの給料じゃとても住めないですよ。親に少し出してもらってるんです」

「優しいですね。ボクは、もう親が二人共いないから・・・」丸山は、少し寂しそうに呟いた。

少し気まずい雰囲気になったところで、エレベータが止まり扉が開いた。陽子は、少しほっとした。

5階の踊り場に出て、廊下を右に曲がり、突き当りまで歩く。
突き当たりまで進んだところは、階段の踊り場になっており、右側に下に降りる階段。左側は、さらに奥に廊下が続き、2つのドアが向かい合っている。そこからぐるっと上に登る階段が繋がっていた。
その2つのドアのうち角部屋が陽子の部屋だった。

丸山は、ドアを見て、「へぇ」と呟いた。

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