真夜中の足音(中編)
「あ、ありがとうございます」
陽子は、再びお礼を述べた。
さっき、ドアが閉まる時、鍵をかけなかったか?
ドアが閉まったときの音をもう一度思い返す。
「気をつけて下さいね・・・あと、それと、最後に一つお願いがあるんですよ」
丸山は、陽子の思考を遮るように言葉をかけた。
「あ、はい、何ですか?」
”最後”という言葉に、陽子は反応した。
そのお願いを聞いたら帰ってくれるという意味に捉えたからだ。
「ちょっと無理なお願いかもしれませんが・・・」
初めて見せた、丸山の申し訳なさそうな顔。
「死んでくれませんかあ?」