真夜中の足音(中編)
陽子は、丸山から逃げるために、どうしようとドアを押さえながら考える。
トントン
ドアが、叩かれた。
「原さん・・・。ここ開けてくださいよぉ」
陽子の手には、ドアノブを上下する動きが伝わってくる。
「ヤダ!やめてください!」
陽子は、ドアに体重をかけながら必死にドアノブの動きを止めようとしている。
「あ、原さん、見つけましたあ」
陽子は、声がした方を見上げた。
リビングのドアは、三十センチほどの正方形の磨りガラスが、左右一枚ずつ計十枚はめ込まれていた。そこの一番上の右側のガラスに、丸山が顔をピッタリぴったりとつけてこちらを凝視していた。
磨りガラスなので、向こうからは、いくら近付いてもこちらは見えないはずだが、こちら側からは、丸山の顔が、目の動きまではっきりと見えた。