真夜中の足音(中編)

ドアを押さえながら、ここから逃げ出す方法を考える。

ベランダに、非難はしごがあるが、組み立ててるうちに掴まってしまうだろう。そもそも、右足が不自由な今、丸山より早く動けるとは思えない。

 ペタァ ツーツーツーッ

磨りガラスから音がして、再び見上げると、丸山が、磨りガラスを舐めていた。
舐めると、こちら側が見えやすくなると思っているのだろうか。

「原さぁーん。開けて下さいよ~お」

陽子は、身体中の肌が粟立つのを感じる。

「な、何考えてるんですか!」

さっきから、甘ったるい声で語りかける。
丸山の精強な肉体とのギャップが、余計に気持ち悪く感じられる。

「はにって、はらはんと仲良くなりたいんですよぉ」

丸山は、磨りガラスを舐めながら、抜けた声を出す。
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