真夜中の足音(中編)
陽子は、逃げる方法を懸命に考えていたが、どうしても良い方法が浮かばない。
その時、陽子は、先ほど丸山から受け取った携帯のことを思い出した。
あれで、外部に助けを求められれば・・・。
しかし、陽子は、携帯を手にしていなかった。
おそらく、玄関からリビングに逃げようとして、つまずいた時に廊下に落としてしまったのだろう。
生憎、部屋には電話は引いていない。
八方塞だ。
「はらさぁ~ん」
自分の顔の目の前の磨りガラスに丸山の顔が現れた。
「キャー!」
陽子は驚きの余り叫び声を上げて、飛びのいた。
ガチャ
ノブが回り、ゆっくりとドアが開く。
「やっと、私を受け入れてくれるんですねぇ。嬉しいですよお」
丸山は、顔だけ部屋の中に入れると、陽子の方を向いて笑った。