真夜中の足音(中編)

「私が、小学校四年生の時です。私の家は、貧乏な家庭でした。貧乏でしたけどね、家族三人助け合って、私は幸せだったんですよ」

丸山は、昔を思い出して、さらに切なくなったのか、涙が流れ続ける。

「でもね、母はある日殺されてしまったんです。父も行方不明になってしまいました。新聞なんかでちょっとした事件になったようですが、私は事件のことは何も教えて貰えませんでした。ただ、お父さんとお母さんは、事件に巻き込まれて二人は死んだのだ。といわれました。でも、私は子供心に何となくわかっていたんです。

 母は父に殺されたんだって。

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