真夜中の足音(中編)

裏庭には、物置がありました。あぁ、私の家は平屋の一軒家だったんです。ボロボロでしたけど。
そこには絶対に近付いちゃいけないって、いつも言われてました。

ある日、夜中に怖い夢を見て、目が覚めました。今でも覚えてます。
360度そこら中に私の身体より大きい魚に囲まれてましてね。たくさんの魚の目が、じっとこっちを見つめてるんですよ。
何をするでも無い。ただ、じっとたくさんの魚の目がこっちを見てるんです。そして、しばらくすると魚からたくさんの手が生えてきて、私を捕まえようとするんです。
その間も、魚達は私をじっと見つめてるんです。

私は、恐怖のあまり声を出して飛び起きました。

こういう時は、いつも母親に抱きついて背中をポンポン叩いてもらうんです。

そしたら、幸せな気持ちになって今度は怖い夢を見ないんです。

でも、その時は、起きたら母親の姿が無いんです。
反対側の父親の姿もありません。

二人共どこへ行ってしまったんだろう。こんな真夜中なのに。


私は、怖くなってトイレにも行けなくなりました。

そうやって、一人でガタガタ震えてたら、家の外から声が聞こえて来たんです。

それは、まさに地獄から聞こえるような声でした。

それは裏庭の物置から聞こえてくるんです。

あの裏庭に両親が行くなと言ったのは、きっと地獄と繋がっていたからだとその時思いました。

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