真夜中の足音(中編)
「そこにじっとしていて下さいね。強引なことはしたくないので」

丸山は、自分の今までの行動を棚に上げてそう言うと、陽子の手とレンジを置いてある棚に手錠を掛けると、インタンホンの映像を確かめるために、リビングの入り口まで歩いていった。

 ピンポーン

その間に、もう一度インタンホンが鳴り響いた。

丸山は、少しの間玄関先の映像を見た後、陽子の元に戻ってくると、手錠を外した。

「男の方がお見えになってますよ。彼氏ですか?」

陽子の脇の下を持ち上げると、そのまま支えるように、陽子を画面の前まで導く。

「誰ですか、この人は?」

陽子は、画面に映る男を見る。

「多分・・・下の階に住んでいる方です」

丸山は、右手で顎を触りながら何かを考えているようだった。そして、

「追い返してください。もし、できなかったら、あの人も死ぬことになる」

その言葉を聞いて、陽子は、何より自分が死ぬことが前提になっている事実に落胆した。
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