真夜中の足音(中編)
「なんで、こんなこと、するんですか・・・」
安藤がいなくなってから、しばらく時間が経っていた。
陽子は、どうにかして安藤にまで被害が及ぶのを防がなければいけないと思っていた。
何とか、その糸口を見つけるために、丸山に向かって言葉をかけてみたのだ。
しかし、丸山は陽子の質問に答えず。画面を見ながら何かをブツブツ呟いていた。
「お母さん。大丈夫だよ。お母さん。大丈夫だよ」
その言葉を呪文のように、繰り返している。一体、何が大丈夫なのだろうか。
陽子は、恐怖を押し殺す。
「すいません!」
自分で思ってるより、大きな声が出たので自分でもびっくりする。
しかし、そのせいで丸山の口の動きが一瞬止まった。
「あの、私誰にも言いません。だから、こんなこと、こんなこと、ダメだと思います!」
陽子は、そう言ってから、もっと他に良い言い方があるだろうと、自分自身に落胆した。
丸山は、ゆっくりと顔だけを陽子の方に向ける。
「そんなこと言ってもダメだよ。だって、そうやってボクは一人ぼっちになったんだから。もう騙されないよ。ママ」
焦点の合って無い目で見られて、陽子は心底震えた。
この人には、何を言っても無駄かもしれない。
そう思った時、インタンホンの音が部屋に響いた。