真夜中の足音(中編)
「さ、行きましょ」
安藤は、そう言うと、陽子に近付いて来た。
「イ、イヤァッ!」
陽子は、玄関にハイハイして逃げようとするが、髪の毛を掴まれる。
そのまま、引っ張られると、顔を両手で挟まれた。目の前に安藤の顔がある。
「連続通り魔から助けてあげたのに、この扱いは失礼じゃないの?でしょ?」
目を正面から見つめられる。相変わらず犬のような笑顔だが、いつの間にかその奥に冷酷さが溢れ出していた。
「やっぱりボクのタイプど真ん中だ」
そう言うと、安藤は、陽子の頬を舐め上げた。
陽子は、その感覚に嫌悪感を感じる。
「ずっと見てたんだ。24時間ずっと。陽子、君のことが大好きなんだよ」
そして、部屋の隅を指差す。
「ホラ、あそこのクーラーのダクトのところ。あそこのカメラで、いつも陽子がご飯を食べるのをいつも見てたんだよ。台所で料理するところだって。もちろん寝相が悪いのだって知ってるよ。トイレだって、脱衣所だって。全部だよ、全部!ずっと見てたんだ!」