わがまま姫♀
行くところなんて決まってない。
特別話したかったこともない。
ただ…そう、なんとなく。
昨日までは、1人でどっかで昼寝でもしようと思ってた。
こんなめんどくさい奴となんて、まっぴらごめんだと。
けど今は、自らコイツの手を引いている。
やっぱり俺は、どこかおかしくなったのか。
「ちょっと、聞いてんの?」
「…あ?」
「だから、取り合えず人目につかないとこ行こって!」
「…なんで」
俺が聞き返すと、姫央は目だけを動かし、右を見たり左を見たり。
その時初めて俺も周りを見る。
……あぁ。
なるほど。
俺達の周りに、人だかりが出来ている。
「キャ~、あれがキスしたっていうカップルでしょ!?」
「本当に仲いいんだね!」
「婚約までしてんだもん!すごいよねぇ」
そんな声が聞こえる。
今、大注目の的だ。
「……行くか」
「……うん(恥)」
なるべく速やかに。