わがまま姫♀
“…コツ…コツ…”
あたしは震える足で立ち上がり、足音が聞こえてくる方とは逆の方向に進もうとしたら。
“グイッ”
「ひゃっ…!?」
後ろから伸びてきた大きな手に、腕を力強く引っ張られた。
絶体絶命っっ!!
固く目をつぶった瞬間、
“ぎゅう…”
あたしの体は誰かの腕の中。
……え!?
「「………」」
一瞬、なにが起きたのか分からなかった。
けどすぐにハッとする。
「ちょっと津戸、離してっ!」
手で胸板をトントン叩いて抵抗してみるけど、相手は余計に力を強くする。
「…お前、あんな奴と俺を間違えるとは、いい度胸してんじゃねーか」
「え」
え、お、俺!?
……まさか?
こんなえらそうな奴、一人しかいないよね?