わがまま姫♀



「……なに…やってんだよ」



この状況が把握出来ていない様子で、固まっている流。



だって。



あたしは泣いてるし。



田辺の胸板を押し返してるし。



田辺はあたしを抱き締めてるし。



それを見られちゃった。



見られたくない人に。



…最悪だ。



「お前が泣かせてんだよ」



田辺はあたしから離れたかと思うと、流に向かってそう言う。



「は…?」



流の声のト音は、明らかに怒ってる声。



…怖い。



「だから、お前が他のおん…」

「やめて!」



あたしは田辺の言葉を遮った。



「何でだよ、お前いいのかよ!泣くほど辛かったんじゃねーのかよ!」

「別に、大丈夫だって言ってるでしょ!!」



イヤだ、イヤだ、イヤだ。



流には知られたくない。



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