わがまま姫♀
あ?
こんな時に、誰がなんの用だよ。
ゆっくり振り返ると、見覚えのない顔がそこにあった。
「やっぱり流くんだ!覚えてる?あたし!」
???
誰だ。
「……誰?」
「ひっどーい!千果(ちか)だよ、千ー果!」
「………」
……チカ?
ちか、ちか、ちか。
千果?
「千果…って、大河内の?」
「うん!やっと思い出した?」
俺が目を見開くと、千果は懐かしい笑顔で笑った。
千果は親父の取引先の娘で、歳は俺の1つ下。
千果も姫央と同じ、社長令嬢ってやつだ。
姫央に比べると小さいかもしれないが、千果の家もかなりの規模の財閥。
「流くん、本当に転校したんだね」
「社長命令だからな」
「それになんか、雰囲気も変わったね」
「雰囲気?」
「うん。近付きやすくなったよ」
千果はニッコリ笑顔で言った。