わがまま姫♀



俺はしばらく動けず、その場に立ちつくしていた。



「…なにやってんだよ?」



やっと口が動いた俺に、田辺が言い返した。



「お前が泣かせてんだよ」



俺が泣かした?



泣き顔のアイツを目の前に、身動きがとれなかった。



「だから、お前が他のおん…」

「やめて!」



………。



なんだよそれ。



俺がなんだよ。



しばらくして、耐えきれなくなった姫央は、泣きながら教室を飛び出していった。



「………」



田辺は机の上に座り、はぁっとため息をついたきり、下をジッと見つめたまま動かない。



…帰ろ。



アイツ追いかけないと。



そう思いドアから離れようとした俺を、田辺が呼び止める。




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