わがまま姫♀
本気で走った。
…あと少し。
アイツの家まであと少し。
俺、前もこんな風に学校からアイツの家まで、全力で走った気がする。
すげー息きらして。
すげー本気で。
すげー必死なんだ。
なのにアイツはその甲斐なく、意地張って、なかなか素直になんかなりはしない。
だから俺だって、恥ずかしいのを我慢して本心を告げた。
「幸せにさせてほしい」んだと。
こうでもしないとアイツは、素直になんてならないから。
世話のやけるお嬢様なんだよ。
あんなお嬢様を扱えるのは、正直俺しかいない。
いや、もういなくていい。
俺だけ扱えれば、それで十分だ。
短気のはずのこの俺が、なんでこんなに世話やきになってんだ。
今までなにもかも、面倒くさいで片付けてきた俺が、なんでこんなに一生懸命にならなきゃいけないんだ。
たかが政略結婚相手に、なんでこんなに本気になってんだ。