わがまま姫♀
こんなことは初めてで、余裕なんて当の昔になくなってる。
全部全部、予定外の狂いまくり。
12月の冷たい風が頬にあたる。
日が落ちるのも早く、もう辺りは薄暗い。
鼻も耳も手も冷えていく。
けど、そんなこと気にしてはいられない。
やっと着いた桃井家。
姫央の部屋まで急ぐ。
“ドンドンっ”
走ってきた勢いで、やっぱりちょっと乱暴に叩いてしまうドア。
「………」
…無視だな。
確実に俺だって分かってるだろ、コイツ。
俺だって、お前がいるのは分かってんだよ。
玄関にお前の靴が、散らかっていた。
どうせ適当に靴をほり捨てて、部屋まで駆け込んで来たんだろう。