わがまま姫♀




遥があたしを平気でほっていけるのは、あたしが簡単に迎えの車を呼べることを知ってるから。



家に電話1本すれば、牧原が迎えに来てくれるだろう。



だけど、そんないかにもお嬢様のような事はしたくない。



それならあたしは、どうしようか。



やむ気配のない雨。



「……はぁ」



残る選択肢はただ1つ、走るしかない。



男を捕まえるだなんて、あたしには到底無理!



せ、せーのでいくか…!



「せーの…っ」



“ぐいっ”



「ぎゃっ…?!」



覚悟を決めて、いざ戦場へと飛び出そうとしたあたしの腕を、誰かが乱暴に引き寄せた。



な…なに?!



やっとの思いで、覚悟決めれたってのにさ(怒)



「お嬢様がこの雨の中、傘もささずに帰んの?」



この声にはかなり、聞き覚えがある。



勢いよく振り返る。



「お嬢様お嬢様言うな」

「一応、家柄的には立派なお嬢様だろ?」



まぁ、そうだけどさ。



一応家柄的にって。



「俺さ」

「…なによ」

「傘あんだよねー」



口悪男があたしを見おろして、わざとらしく言う。



こ、こいつ…!!



「…どーしてもって言うんなら、入れてやらないこともないけど」



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