わがまま姫♀



土砂降りのなか、2人で傘1本で歩くあたし達。



「………」



今日は、口悪男が口悪男じゃない日。



傘に入れてくれただけじゃなくって。



その傘を、あたしが濡れないように、自分の肩を濡らしてまで傾けてくれてる。



調子が狂わされる。



「ねぇ、今沢ん家ってどこなの?」

「…別にその辺」

「ふーん……」



その辺…。



ってどこだよ!?




嵐はおさまるどころか、ドンドン激しさを増す。



「あ、あの、ここまででいいから!」



家まで後少し。



だけどこの相合い傘状態は、どうも落ち着かない。



「家まで送ってやるよ」

「いや、でも…」



“ビューンッッ”



突然の強風に、思わず目をつぶった。



「……あ…」



そんな声が聞こえ、ユックリと目を開くと、遠くを見つめる今沢。



「どーかしたの?」



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