わがまま姫♀
牧原は自分の首にあるマフラーを、あたしの首に巻き付ける。
「なにか、あったんですか」
あたしの目の前にしゃがむ牧原。
「……別に」
あたしがそう言うと、牧原はハァーとため息をついた。
「どれだけ姫央さんを見てきたと思ってるんですか?」
「え」
牧原の瞳は、いつになく真剣だった。
「流さん、ですね」
…なんで。
なんで分かっちゃうの。
「…違うよ」
また嘘をついた。
牧原に嘘なんてつけないのは分かってる。
だけど、2人が仲良くしてる姿を見て、モヤモヤしてる自分を認めたくなかった。
「姫央さん?」
“ぽたっ”
一粒の滴が、地面を湿らせた。