わがまま姫♀
その時、俺は来なければよかったと後悔した。
そこにいたのは、姫央と牧原さんだ。
だけど、ただ2人で居るだけじゃない。
牧原さんの胸に、姫央が頭を預けている。
…あれは多分、泣いてる。
どれだけ泣かせてきたと思ってる。(←自慢にならない)
まさか、そういう関係だったのか?
いや、それはないか。
いろんなことが頭に浮かんでは揉み消す。
俺はただ、遠くから見つめることしか出来なかった。
そして2人に背を向け、車へと歩き出していた。
多分、今のを見てみぬふりしたいのは。
知らなかった事にしたいのは。
全部、俺に自信が無いからだろう。
婚約発表の時の質問。
──“お2人は両思いなんですかね?”──
あの時だってそうだった。
即答なんて、出来るわけがない。