わがまま姫♀
そんなことを考えていた俺の視界に、小さくアイツが映り込む。
その姿はドンドン大きくなり、俺の前で止まった。
「…ゴメン。遅くなって」
「…いや」
2人の間に、気まずい空気がジリジリと流れる。
言わなくても、お互いが出す空気で伝わるものもある。
さすがの姫央も、いつもと違う空気に気付いている。
「……行くか」
「うん」
短い会話。
「どこまで行きますか?」
多分、1番気まずいのは運転手だ。
2人っきりってのもキツいけど、仕方ない。
「…やっぱいい、歩く」
「え…?!あ、かしこまりました」
「行くぞ」
「えぇ!?」
俺は姫央の腕を掴んで車からおりて、歩き出す。
「流、どこ行くの?!」
「知らない」
「は!?」
行き先不明。
ただ、運転手が気の毒だから。
「とりあえず腹減った」
「あ…うん」