わがまま姫♀



会社を背負うってこと?



「……たったの1年だろ」



分かってる。



本当は、1年なんかで帰っては来れないということ。



いくら流でも、経営を1年で身につけるのは、そうとう困難だということ。



お母さん達が、気を遣って嘘をついてること。



……分かるよ。



流も、“たったの”だなんて思っていないこと。



でも。



仕方ないんだもんね。



社長になるんだから。



これくらい当たり前なんだよ、きっと。



「…待てるのかよ」



流は立ち上がり、あたしを見下ろしている。



あたしはうつむいたまま。



涙がジワジワと、すぐそこまできてんのが分かったから。



行かなきゃいけなくて。



だけど、行ってほしくはなくて。



そんなわがままな気持ちが交差する。



何も言わないあたしに、流は立ったまま背を向けた。



何を思ったのか、あたしは自分から流に近づいた。



そして流の服の裾をギュッと握りしめて、背中に抱き着いた。



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