わがまま姫♀



千果ちゃんと田辺までくっついちゃったら、あたしは本格的に1人だ。



「……寂し…」



ポロッと口から出た言葉に、直ぐさま後悔した。



「お1人ですか?」



声と同時に、ストンと隣に誰か座る。



「?!」

「お久しぶりですね、姫央さん」



……津戸だ。



覚えてる?



下の名前、尚輝っていうんだよ。



前に1度だけ、言ったことあるんだけど。(←P229参照)



全国的にも有名な、生け花界の王、津戸家の息子だからなのか。



ここ数ヶ月はろくに学校にも来ず、地方各地で“生け花の集い”とかいうのをやっていたらしい。



「久々に姫央さんと話せて嬉しいです」

「…あたしはちっとも嬉しくないけど」



プイッと顔を背け、ステージへと向ける。



「他にもっと、会いたい人がいるからですか?」

「…なによ、それ」



どんな状況だろうと、アンタに会ったくらいで嬉しいだなんて思わないっての。



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