わがまま姫♀



眉を下げて、言いずらそうに牧原は言った。



「社長と奥様が写真などを見せて、姫央さんが脱走でもしたらと、おっしゃられてまして…」

「は…!?」



だ、脱走?!



「んなことしないわよ!」

「…ですよね」



ほんっと、なに考えてんのか分かんないよ。



脱走って、どうせすーぐ捕まるんだからしないよ。(←脱走経験者)



「牧原、あたしの部屋のお皿さげといて…」

「はい」



力なくそう言うと、あたしは自分の部屋に戻った。



“ボフッ”



ベットに向かって、クッションを投げつける。



…まぁ、ようするに。



八つ当たり、だよね。



八つ当たりでもしてないと、やってられないよ。



“コンコン”



あれ?



お皿なら、部屋の外に出してあるはず。



「…はい」

「…俺、陽向」



陽向?



珍しい。



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