もう少しだけ、あなたのそばに
私がこの部屋に来るまで、彼はこのマンションで、一人で住んでいたのだろうか?
ここは3LDKの間取りだけど、一つ一つが無駄に広い。
リビングなんて何畳あるのよってくらい。
キッチンもとっても立派だったけど、私が来る前は誰も使っていなかったみたいに綺麗だった。
冷蔵庫も備え付けなのか、これまた無駄に大きい。
この大きな冷蔵庫に一つだけいいことがあるとしたら、冷凍庫も大きいこと。
彼は、仕事で帰りが遅くなることはしばしば。
食事がいらないときもあれば、いらないといったのに突然帰ってきて食べるときもある。
そんなときに備えて、冷凍庫にはストック食品をいつも常備している。
誰もいない部屋で食事の準備をしながら、掃除やら洗濯などをこなしていく。
もちろん、梨乃のリクエストであるパウンドケーキも忘れずに作った。
今日、帰りが遅くなると言っていた彼がいつ帰ってくるのかは不明。
だから、さきにお風呂に入って待っていることにした。
お風呂から出た所で、
ピンポーン
ドアホンがなる。
慌てて玄関モニターを確認すると、彼だった。