もう少しだけ、あなたのそばに
ノックをして部屋に入ると電話中だった秋と目が合い、私は頭を下げて自分のデスクに座り、仕事の続きを始めた。
しばらくすると、電話 を終えた秋から、
「花憐。」
と呼ばれ、慌てて、秋のそばまで行く。
「あの、ごめんなさい。コーヒーを買いに行っていて、遅くなりました。」
「そうか。ならいいんだ。迷子になってないか心配しただけなんだ。」
「あの、秋?私、そんなに方向音痴じゃないですよ。」
「そうか、そうか。ごめんな。あのエレベーターなら、迷うことはないと思っていたけど、一応な?」
「へ?・・・」
「うん?俺と一緒に乗ったエレベーターを使ったんだろう?」
「いいえ、あの・・あのエレベーターって重役専用ですよね?」
「一般用を使ったのか?」
「はい。だって、一人だったし、あの・・・・」
下を向いてモジモジしながら、言っていたら、急に体が拘束された。