もう少しだけ、あなたのそばに
急いで玄関ドアを開けると、ダークグレーのスーツを王子様みたいに着こなしている彼。
「お帰りなさい。」
「ああ、ただいま。」
彼から上着と鞄を受け取り、彼の後を追って、寝室へと向う。
スーツを脱ぎ捨てながら、
「風呂、入ったのか?」
「あ、はい。先に頂きました。」
「じゃあ、俺も入ってくる。」
「はい。」
彼が脱ぎ捨てていった服を片付けて着替えをおいて、キッチンへ。
作っておいたビーフシチューを温めなおしながら、食事の準備をする。
テーブルに並べ終わった頃、ちょうどよく、彼がダイニングに入ってきた。
濡れた髪をタオルでワシャワシャ拭きながら、席に座るのを見計らって、冷えたビールを彼の前に出す。
ビールを飲みながら、食べだす彼を見て、私もゆっくりと食べ始める。
ここまでの流れからすると、まるで夫婦のよう。
でも、これが、この家に来てからの日常だ。