もう少しだけ、あなたのそばに
「何かあった?」
「いえ、何も・・・・」
私は、倉橋さんの顔を見ずに言った。
「何もないって顔じゃないよ。」
そう言われても、私は何も言わなかった。
すると、倉橋さんが私の手に何かを握らせた。
驚いてみると、それは名刺。
「何かあったら、いつでも連絡して。
俺じゃあ頼りないかもしれないけど、相談ぐらいはのってあげられるから。」
「倉橋さん・・・・・・」
「なんか月島さん、ほっとけないんだよ。だから、俺のお節介受け取ってよ。」
そう言って、悲しそうに笑う彼に私に刺さった棘の痛みが少しだけ和らいだような気がした。
倉橋さんと別れ、部屋に帰ると、誰もいなかった。
でも、私が部屋に入ってすぐにまるで待っていたかのようにさっきの彼女が入ってきた。