【短編】不器用なあたし達の愛の証
不器用なあたし達の愛の証
「…最低」
無様とは、まさにこのことだろう。
年に一度の彼の誕生日は、思い出に残るものにしてあげたいって。
一時間かけて巻いた髪も。
テーブルに並んでいる、彼の好物ばかりを集めた料理達も。
彼の喜んだ顔を思い浮かべながら買った、プレゼントも。
一人で虚しく装飾した、彼の部屋も。
「あーもう、ほんと厄日」
今思えば朝焼いた目玉焼きが焦げたのも、階段で足を滑らせて大きなアザをつくったのも、集めていた懸賞用のシールを間違えて全部捨てたのも。
全て、この悪夢の前兆だったのかも。
< 1 / 13 >