線香花火
線香花火

「茉莉!花火しよう!」

7月の夏の夜。

街の灯りが一層
輝きを増す頃。

いきなり家に訪ねてきた
私の幼なじみ。

「亜樹!?今行くから待ってて!」

インターホン越しに
そう叫び、私は急いで
家の階段を駆け上ろうとした。

「ちょっと茉莉!あなた、
風呂上がりでしょう!?
濡れたまま上がって来ないで!」

母親が、体にバスタオルを
巻いただけの私に怒鳴り付ける。

「うるさいな。
あまり大声で怒らないで。
亜樹に聞かれちゃうじゃん!」

「亜樹斗君が来てるの!?
それなら早く言いなさいよ!」

母親が一層眉をひそめて
私に言った。

「チャイム聞こえなかったの!?
耳悪いんだから!お母さんは!」

私はそう言い捨てると
バタバタと階段を駆け上って
部屋に入った。

そして、ドライヤーも使わずに
長い髪を櫛でとかして
髪をかきあげて
ポニーテールを作った。
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