線香花火

パチ、パチと私の花火が
音を乱し始めた。

きっともうすぐ終わる。

そう直感した。

予想通り、パチ、と最後の音を出して
火の玉がポトリと地面に落ちた。

私の負けだ。

悔しい、という気持ちは
全くなかった。

むしろ、良かったと思っている。

自分の願いを言うことが
怖かった。

言ったら、亜樹斗に告白
するのと同じだ。

それで言ってフラれたら
お話にならない。

恥をかくだけだ。

そんなのはごめんだ、と思った。

「よし!俺の勝ちだ。
願い事を言うぞ!」

と、意気込んで言った。

「茉莉が好きだ!」

…え?

今、なんて…?

「ねえ、今、なんて…」

私はもう一度、聞き返した。

「今?茉莉が好きだって言ったぞ」
< 11 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop