線香花火
私も恥ずかしくなって
目をそらして地面を見た。
なんだ。
私の想いは空回りじゃなかった。
亜樹斗も私を好きで
いてくれた。
怖くなんてなかった。
それなら、私が勝ったって
良かったのに。
そんなことを思ううちに
フッと笑いが込み上げてきた。
「はは、ありがとね。亜樹」
私が笑いながら言うと
「なんで笑ってんだ?」
と亜樹斗が首を傾げた。
「なんでだろうね。あはは!おかしい…」
「もしかして…。俺の告白が
おかしかったのか?」
「そんなんじゃなくて…。
何かがおかしいの!」
あはは、とお腹を抱えて
笑う私に亜樹斗が一歩
歩み寄った。
「え、何する気?」
私も笑うのをやめて
真剣な顔をしている亜樹斗に
少しビクッとした。
そして、顎を上に向かせて
自分の唇を私の唇に重ねた。
亜樹斗の唇は
少しカサッとしていた。
突然のことに、驚いて
何も言えない私に
「あまりにも笑うから、してやった」
と亜樹斗は悪戯っぽく笑った。
「もう、馬鹿!」
と顔を真っ赤にして私は
亜樹斗の胸を叩いた。
「ほら、帰るぞ」
スッと差し出された手を
そっと重ねると
きゅっと握られた。