線香花火
「遅かったな!」
ハアハア、と
息切れしている私に
ニッと爽やかな
笑顔を見せる彼。
池田 亜樹斗。
「ごめん。支度が遅くなって」
「いいって。てか、
風呂上がりだったのか?」
意味ありげな顔をして
亜樹斗が言った。
「なんで知ってんの!?」
私は、つい大声を
出してしまった。
「だって、茉莉のお母さんの
声が聞こえたから。
風呂上がりでしょう!?って」
そう言って、亜樹斗は
目をつり上げて
私の母親の真似をした。
これは、幼なじみだから
出来ることだ。
私はプッと吹き出した。
「あはは!そっくり。
もう一回やって!」
パチパチと手を叩いて
アンコールを送る。
「いや、もうやらない。
恥ずかしいし」
亜樹斗はパッと目をそらし、
「さ、やろうぜ」
と、花火を出した。